車やミニ四駆の速度を計算する方法2-モーターやギヤから計算する

機械力学
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こんにちは、ジェノンです。
前回は、車やミニ四駆のタイヤの直径と回転数から、速度を計算する方法を解説しました。
しかし、タイヤの直径は測れば良いのですが、タイヤの回転数はどのように求めるのでしょうか。
今回はモーターやギヤなど、車やミニ四駆の構成部品からタイヤの回転数を、最終的に速度を計算する方法を解説します。
それでは、よろしくお願いします。

この記事について

この記事で分かる事

  • ミニ四駆のモーターやギヤの情報から、マシンの速度を求める。
  • 車のエンジンや変速機の情報から、車の速度を求める。

こんな人に向けて書いています

  • 車やミニ四駆の速度を、パーツや諸元表から求める。
  • ミニ四駆のスピードチェッカー欲しかったのにもう売っていない…。自力で速度求めてみたいけど、どうしたら…。

前回のおさらい

前回の記事では、タイヤの直径とタイヤの回転数から、車やミニ四駆の速度を計算する方法を解説しました。
タイヤの直径をd、円周率をπ、タイヤの回転数をnとすると、
速度V=d×π×n
でしたね。
前回の記事は、こちらです。

車やミニ四駆の速度を計算する方法1-タイヤの回転数から計算する
https://physics-car.com/speed-1/

ここで、dはタイヤの説明や、実際に直径を測ればすぐに分かりますが、タイヤの回転数はタイヤの情報だけでは分かりません。
そこで、今回はタイヤの回転数を求める方法を解説します。
タイヤの回転数が分かれば、すぐに速度が分かりますね。
頑張りましょう。

この記事の結論

ミニ四駆のモーターの回転数をn(モーター回転数)、ギヤの減速比(ミニ四駆では「ギヤ比」と呼ばれています)をi(減速比)とすると、タイヤ(又はホイール)の回転数nは、以下のように計算できます。

タイヤ回転数n=n(モーター回転数)/i(ギヤの減速比)

なお、車の場合も同様です。
エンジンの回転数をn(エンジン回転数)、変速機と最終減速比を合わせた全体の減速比をi(全体の減速比)とすると、以下のように計算できます。

タイヤ回転数n=n(エンジン回転数)/i(全体の減速比)
=n(エンジン回転数)/{i(変速機の減速比)×i(最終減速比)}

※モーターの回転数を表す記号が、良いものを思いつかず、タイヤの回転数とややこしくなってしまいました。ご了承願います。revとか考えたのですが、とりあえず複数文字で一つの意味にするのはここではやめようと思いました。

ここで求めたタイヤ回転数nと、タイヤ直径を使うことで、前回求めた計算により、車やミニ四駆の速度が計算できます。

それでは、解説していきます。

タイヤの回転数を求める

タイヤを回す要素

突然ですが、どうすればミニ四駆のタイヤは回ると思いますか。
タイヤを直接手で回したり、コースにミニ四駆を置いて手で押すのはダメですよ。それじゃレースしている状態ではないじゃないですか…。
ミニ四駆をやっている方なら分かりますよね。
ミニ四駆のタイヤを回すには、マシンの裏、シャーシについているスイッチをオンにすれば良いんです。
スイッチオンすると、電池の周りにあるターミナルという金具が動いて、電池に当たります。すると電池とモーターとで電気回路が繋がり、モーターに電気が流れるようになります。
モーターに電気が流れると、モーターは回転します。
その回転がギヤを伝ってタイヤが付いているホイールに伝わり、結果タイヤが回転します。
というわけで、スイッチオンしてモーターを回すと、タイヤが回ると言うわけです。
という事は、モーターの回転とギヤとタイヤの回転とに、何か関係がありそうですね。
順番に考えてみましょう。

モーターの回転数について

まずは、モーターの回転数について考えてみましょう。
モーターの回転数については、各モーターの仕様に記されています。
今回はトルクチューン2モーターで考えてみましょう。

例)トルクチューン2モーターの回転数は、タミヤ公式ページを読むと、12300~14700r/minと書かれています。

トルクチューン2モーターに限らず、ミニ四駆のモーターの回転数は、ある程度幅があるような書き方がされています。
今回の計算においては、記されている大きい値と小さい値の平均値を使えば良いでしょう。
よってトルクチューンモーター2の回転数をn(トルクチューン2)とすると、
n(トルクチューン2)=(12300+14700)/2=13500r/min

さて、この回転数の単位は、r/min(一般的にはrpmと表記されます)です。
r/min又はrpmとは、1分間の回転数という意味です。
ここの”r”はrevolutions、日本語で回転という意味です。
この後の計算のために、1秒間の回転数になおしておきます。
1分間は60秒→1秒は1/60分なので、回転数は
n(トルクチューン2)=13500(r/min)/60=225(r/s=rps)
これが、トルクチューン2モーターの、1秒あたりの回転数です。

ギヤについて

さて、スイッチオンでモーターが回転し始めますが、その回転で直接ホイールやタイヤを回しているわけではありません。
モーターの回転は、モーター軸に付けられたピニオンギヤを使って、モーターの横にセッティングしたギヤに伝わっています。
と言うわけで、次はギヤの働きを考えてみましょう。

ギヤの減速比

そもそもギヤは、回転を伝えるための装置です。
しかし、ギヤは単純に回転を伝えるだけではありません。
ギヤを使う事で、回転数を変えることができます。
与えられた回転数に対して、出力する回転数が低くなる時、このギヤにより「減速した」と表現します。

では、ミニ四駆のギヤは、どのくらい減速するのでしょう。
実はそれは、みなさんお馴染みのギヤの名前に書かれています。

5:1標準ギヤ

4.2:1スピードギヤ

4:1ハイスピードギヤ

3.7:1ハイスピードEXギヤ

3.5:1超速ギヤ

これらギヤの数字、例えば標準ギヤだと5:1というのが、実はどのくらい減速するかを表す数字です。
標準ギヤの5:1というのは、「モーターが5回転するとホイールシャフトが1回転します」という事を表しています。
これを、「減速比5」と言います。減速比の記号はiをよく使います。
同様に、ハイスピードギヤなら減速比i=4、超速ギヤなら減速比i=3.5と言います。
標準ギヤはモータが5回転してようやくホイールが1回転ですが、超速ギヤはモータが3.5回転だけすればホイールが1回転します。
もしも同じモータが35回転した場合、標準ギヤはホイールが7回転するのに対し、超速ギヤは10回も回転することになります。とても速くなりそうですね。
という事で、ギヤ比として表されている数字が減速比と呼ばれるもので、数字の分回転数が減速している事を表していると理解してください。

モータとギヤから、タイヤの回転数を計算する

さて、実はミニ四駆の場合、モータの回転数とギヤの減速比が分かれば、もうタイヤの回転数を計算することができます。早速やってみましょう。


今回の例は、以下で考えます。

使用モータ:トルクチューン2モーター

使用ギヤ:標準ギヤ

この場合のタイヤの回転数を求めてみましょう。

トルクチューン2モーターの回転数n(トルクチューン2)=225(r/s)

標準ギヤの減速比i(標準ギヤ)=5

タイヤ(ホイール)の回転数n=n(モーターの回転数)/i(減速比)

n=225/5=45(r/s)

というわけで、トルクチューン2モーターと標準ギヤを使った場合、タイヤの回転数nは、45(r/s)となりました。
前回の記事で、「タイヤの回転数を45(回転/秒)とした場合…」という例題を記しましたが、あれはトルクチューン2モーターと標準ギヤを使った場合の回転数だったのですね。

色々なパターンの計算

というわけで、モータとギヤからタイヤの回転数を計算することができました。
それでは、先程のモータとギヤ以外の組み合わせも少し計算してみましょう。

パターン1:トルクチューン2モーターと標準ギヤの場合。
これは先程の計算の通り、タイヤの回転数は45(r/s)でした。

パターン2:レブチューン2モーターと標準ギヤの場合。
レブチューン2モーターの回転数は13400~15200r/minです。
平均値は、(13400+15200)/2=14300(r/min)=238.3(r/s)です。
よってタイヤの回転数n=n(レブチューン2モーター)/i(標準ギヤ)
n=238.3/5=47.66(r/s)

となります。トルクチューン2モーターよりも速くなりましたね。

パターン3:トルクチューン2モーターと超速ギヤの場合。
超速ギヤの減速比i(超速ギヤ)=3.5です。
タイヤの回転数n=n(トルクチューン2モーター)/i(超速ギヤ)

n=225/3.5=64.3(r/s)

となります。レブチューン2モーターと超速ギヤの組み合わせよりも更に速くなりましたね。

パターン4:レブチューン2モーターと超速ギヤの場合。

これまでと同様に、
n=n(レブチューン2モーター)/i(超速ギヤ)
n=238.3/3.5=68.1(r/s)

となります。まさに、超速の組み合わせですね。

速度の計算

タイヤの回転数が分かりましたので、前回の記事の方法の通り、速度を計算することができますね。

前回の記事では、小径タイヤの直径は24mmでしたね。
よってトルクチューン2モーターと標準ギヤと小径タイヤの組み合わせでは、速度Vは次の通りに計算できます。

V=d×π×n
V=24×3.14×45=3391.2(m/s)

それでは、思い切ってレブチューン2モーターと超速ギヤと大径タイヤ(d=31mm)の場合の速度を求めてみましょう。

V=d×π×n
V=31×3.14×68.1=6628.9(m/s)
どうでしょうか。先程の計算結果と比べると、6628.9-3391.2=3237.7(m/s)となります。
つまり、約2倍速く、1秒間で約3mも差をつけることになります。ぶっちぎりですね!

また、モーターにはトルクチューン2モーターやアトミックチューン2モーター、レブチューン2モーターの「チューン系モーター」と呼ばれる初心者も安心して使えるモーターの他に、ライトダッシュ、ハイパーダッシュ、マッハダッシュ、パワーダッシュスプリントダッシュといった、上級者向けの「ダッシュ系モーター」というのもあります。
当然、ダッシュ系モーターはモーターの回転数も更に高くなります。
最速を目指す皆様には見逃せないモーターだと思います。

車やバイクの場合の計算について

ここまで、ミニ四駆の場合の速度計算について解説させてもらいました。
それでは、道路を走っている車の場合はどうでしょう。
実は、基本的には同じ計算をします。
モーターの代わりに、エンジンの回転数を使います。
ちなみにエンジンの回転数は、走っている時タコメーターに表示されますね。(最近はタコメーターが付いていない車も多くなりましたが…)
あのタコメーターで示す回転数はr/minになっているので、計算の際には注意してください。

問題は減速比です。
車も同じくギヤを積んでいますが、ミニ四駆とは大きく異なる点があります。
それは、「走りながらギヤ比を変えられる」ということです。
これを「変速機」と呼びます。トランスミッションとも呼びますね。
車は発進時には1速に入れて、速度が上がるたびに2速、3速…と上げていきますね。
あれは減速比が小さいギヤに入れ替えているんですよ。車ってスゲー。
というわけで、計算の減速比iを、車の諸元表に書いてある、各ギヤの減速比を当てはめればOK…と言いたいところなのですが、実は車にはもう一つギヤを積んでいます。
それが、変速機から出力された回転が、ホイールを回すためのシャフトを回す際にもギヤがありまして(デフギヤ)、それは諸元表の「最終減速比(別名、ファイナルギヤ)」という項目に書かれています。
よって車の全体の減速比iは、トランスミッションで減速された回転数が更に最終減速比でげんそくされるので、次のように計算できます。
i=i(トランスミッションの減速比)×i(最終減速比)となります。
例として、ロードスター(ND)のMT車の1速の全体の減速比は、
i=5.087×2.866=14.579となり、2速の場合は
i=2.991×2.866=8.572となります。

ちなみにちなみに、バイクの場合は、この変速機の他に、最終減速比の代わりに「1次減速比/2次減速比」というのが示されています。これはクランクシャフトとトランスミッションとの間に1次減速比、外から見えるチェーンで駆動している部分で2次減速比があります。
1次減速比と2次減速比はバイクで固定の値ですので、i(1次減速比)×i(2次減速比)を車で言う最終減速比だと思って計算してください。

速度が速ければ速い方が良いのか?

ミニ四駆の話に戻しますね。
ここまでの説明を聞いて、「ちょっとジェノンさん!トルクチューン2モーターよりもレブチューン2モーターの方が速くて、標準ギヤよりも超速ギヤの方が速くて、小径タイヤよりも大径タイヤの方が速いのは分かったけど、じゃあトルクチューン2モーターや標準ギヤや小径タイヤは何のためにあるのさ。この子達いらん子やん」って思った方。落ち着いてください。
ミニ四駆を単純に走らせるだけでなく、色々とセッティングしてより速いマシンを作り上げようとしている皆さんは理解してくれると思いますが、レブチューン2モーターが勝つとは限らないんですよね。
同じく超速ギヤが勝つとも、大径タイヤが勝つとも限らない事を知っていると思います。
それはなぜか。ミニ四駆をやっている方なら答えられますか。
いろんな要因はあると思いますが、一番は「加速力が落ちるから」と答えてくれる事を願います。
え、コースアウトですか?た、確かに…。いやそれは一旦置いといて…。

というわけで、次回は「車やミニ四駆の加速力を求める」というテーマで書こうと思います。
ここまでの「速度を求める」ということについてはミニ四駆をやり込んでいる人も情報発信している方はちらほら見かけますが、加速力については感覚だけ伝えて、具体的に計算している方はあまり多くないような印象ですので、皆様に役立てるのではないかと思っています。
お楽しみに。

ちなみに、自分が使っているシャーシにギヤが使えるかどうかは、タミヤのマッチングリストをご覧ください。
https://www.tamiya.com/japan/mini4wd/regulation_gear.html

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