車やミニ四駆の加速度を計算する〜車に働く力と加速度

機械力学
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こんにちは、ジェノンです。
前回は、車やミニ四駆のモータ(又はエンジン)の回転数、ギヤ、タイヤの直径から、そのミニ四駆や車の速度を計算する方法を解説しました。

前回のブログはこちら

レブチューン2モータや超速ギヤ、大径タイヤの速さがよく分かりましたね。
しかし、ミニ四駆はただ速度を高めれば勝てるわけではないことは、ミニ四駆をやっている人なら体感していることでしょう。
今回はトルクチューン2モータや標準ギヤ、小径タイヤが勝っている、「加速」について解説していきたいと思います。
よろしくお願いします。

この記事について

この記事で分かる事

  • 加速とは何かを知る。
  • 車やミニ四駆が加速するために必要なこと。
  • 車やミニ四駆の加速度。
  • なぜ、スピードの遅いトルクチューン2モータなども活躍できるか。

こんな人に向けて書いています

  • 車やミニ四駆の加速力を具体的に計算したい。
  • 車やミニ四駆で、どっちがスタートダッシュに強いか比較したい。
  • トルクチューン2モータや標準ギヤ、いらん子やん…何に使えるの…?

この記事の対象目安:高校生以上

高校生以上で習うことが含まれているので対象目安を高校生以上としましたが、極力ミニ四駆をやっている中学生にも分かるように頑張ります。

この記事の結論

一般的な物体は、以下のニュートンの運動方程式が当てはまる。
加速度a=物体に与えた荷重F/物体の質量m
ミニ四駆の場合、
タイヤ周りに発生する推進力F=タイヤ周りのトルクTw/(タイヤ直径d/2)
タイヤ周りのトルクTw=モータ発生トルクTm×ギヤの減速比ig

車の場合、
モータ発生トルクTmをエンジン発生トルクTeに、ギヤの減速比igを変速機と最終減速比の積ii×ifとに置き換えると得られる。

なお、全ての抵抗は無視し、タイヤと路面との摩擦係数は1(滑らない)とする。

物体の加速について

「加速する」とは

今回の記事では、車やミニ四駆の加速力について求めたいわけですが、そもそも「加速する」というのは、どう言う事をいうのでしょうか。整理しましょう。
「加速する」とは、速度が増える事を言います。
さっきまで1(m/s)で走っていたのに、1秒後に2(m/s)の速度に上がった場合、加速したと言うことです。
速度の単位は、(m/s)でしたが、これは、「1秒あたり何m進むか」という意味でしたね。
加速の度合いを示す言葉は「加速度」と言いますが、これは「1秒あたり何m/s速度が上がるか」を示すものです。
なので、単位は(m/s)/(s)=(m/s2)となります。
なお、今後この記事では、aの2乗をa^2と表します。これはExcelなどでの記入方法ですね。テキスト形式の入力の都合上、こう書かせてもらいます。
加速の度合いを比べると言うのは、この「速度の上がり方を比べる」という事になります。
よって加速度を比べることが、どちらがスタートダッシュに強いかを比べるのに良さそうですね。
頑張って加速度を求めてみましょう。

ニュートンの運動方程式

さて、物体はどのような状態の時に加速するのか。
これについては、「万有引力」で有名な、アイザック・ニュートンが導いてくれています。

※アイザック・ニュートンといえば、と聞くと、「万有引力」とか、「リンゴ」(?)と答える方は多いかと思います。
しかし、実は物理学において多大な功績を残した人であり、あらゆるところで「ニュートンによって導かれた」と言う事を聞くことになると思います。

ニュートンは、物体の加速度について、次のように導きました。

F=ma
a=F/m

ここに、
a:加速度
F:物体に働く荷重
m:物体の質量
です。

ちなみにこの方程式は、光速に近づくと成り立たなくなることが後に導かれるのですが、私たちの身の回りにある物体は光速に対して非常に遅い速度で動いているので、身の回りのものに関してはF=maが成り立つと考えて良いです。
単位というのは、SI単位という、「国際的にこれを標準の単位としよう」みたいなのがありますが、物体の質量のSI単位は(kg)、加速度のSI単位は(m/s^2)です。
上記のような、質量m=1(kg)の物体を加速度a=1(m/s^2)にするような力の単位を、(N)(ニュートンと呼びます)としました。
なので、1(N)=1(kg×m/s^2)となります。

これによって何が分かるかというと、身近にあるあらゆるものは、物体の質量mにどんな力が働くかFが分かれば、その物体はどれだけ加速するかが分かるということですね。
今はまさにミニ四駆の加速度を求めたいので、後はミニ四駆の質量とミニ四駆に発生する力を求めれば加速度が計算できます。
頑張りましょう。

ミニ四駆の加速度を求める

ミニ四駆の質量を求める

加速度の計算には、ミニ四駆の質量とミニ四駆に働く力を求める必要があることが分かりました。
このうち、ミニ四駆の質量は簡単に分かりますね。
作ったミニ四駆を、重さを量るハカリに乗せれば良いんです。
もし「加速度をシミュレーションしたいぜ!」って人は、全部のパーツの重さを足し合わせて求めてくださいね。

ミニ四駆に働く力を求める

ミニ四駆にはどんな力が働いているか

さて、質量は重さを量るハカリに乗せれば簡単に分かりました。
今回は楽勝かと思われたかと思いますが、実はここからが大変な部分です。
ミニ四駆に働く力を求めましょう。

さて、前回の記事でも似たような事を質問しましたが、ミニ四駆はどうやって走るのでしたでしょうか。
ミニ四駆を走らせるためには、ミニ四駆が唯一通常路面に接触している、タイヤを回す必要があるんでしたね。

ミニ四駆のタイヤを回すには、マシンの裏、シャーシについているスイッチをオンにすれば良いんです。
スイッチオンすると、電池の周りにあるターミナルという金具が動いて、電池に当たります。すると電池とモータとで電気回路が繋がり、モータに電気が流れるようになります。
モータに電気が流れると、モータは回転します。
その回転がギヤを伝ってタイヤが付いているホイールに伝わり、結果タイヤが回転します。
というわけで、スイッチオンしてモーターを回すと、タイヤが回ると言うわけです。

車やミニ四駆の速度を計算する方法2-モーターやギヤから計算する https://physics-car.com/speed-2/

はい、タイヤを回すためにはスイッチオンして、モータを回さないといけないんでしたね。

では、そもそもなぜタイヤを回転させてミニ四駆は進むのかを考えたことはありますか。
答えは、「タイヤを回転させることで、路面から力を受けているから」です。
誤解を恐れずに簡単に書くと、「タイヤが路面を後ろ向きに蹴っているので、路面から前向きに力を受けている」ということになります。

さて、この「後ろ向きに力を与えた分、前向きに力を受ける」というのは、中学生でも聞いたことがあるのではないかと思います。
そう、これももうご存知アイザック・ニュートンが導いた、運動の3法則と呼ばれているものがあります。
その第3法則に、「2物体相互の作用は、つねに相等しく逆向きである」→作用・反作用の法則というのがあります。
力を与えたら、反発する力を与えられる。
やられたらやり返す。

倍返しだ!

…ではなく、同じ分だけ返される、等倍返しですね。

…失礼しました。
これが、路面とタイヤとの間に起きていると考えてください。
ちなみにいうと、今タイヤは路面に対して滑らないものとして考えていますので、念の為。

というわけで、ミニ四駆はタイヤが回転して路面に力を与えた分、路面から前向きに進む力を受けています。
これが、今回加速度の計算に使う、ミニ四駆に働く力です。

タイヤの周りに働く力

先程の内容より、タイヤが路面にどのくらいの力を与えているのかが分かれば、ミニ四駆に働く力が分かります。
では、タイヤの周りはどのくらいの力が働いているのでしょうか。
簡単なイラストですが、以下をご覧ください。

タイヤ(あるいはタイヤを取り付けているホイール)が回転するには、回転させる力Tと、タイヤ半径d/2と、タイヤの接線方向荷重Fとには、以下のような関係があります。

回転させる力(トルク)T=接線方向荷重F×半径(d/2)

回転させる力のことを「トルク」と言います。
トルクの単位は、力×半径なので、(N)×(m)=(N×m)ですね。
中学校以上の数学で教わったかと思いますが、”×”は”・”って略すような書き方もあるんでしたよね。
これにならってか、一般的にトルクの単位は(N・m)って表現します。
トルクを増やすためには、円の接線方向荷重Fを増やすか、Fが働いている位置=半径を増やすかをすれば良いことが分かります。
若干微妙ですが、「てこの原理」を思い出してもらうと割と納得していただけるのではないかと思います。
式を入れ替えると、

F=T/(d/2)

となりますので、タイヤ周りに働く力=ミニ四駆に働く力は、タイヤのトルクと、タイヤ直径(=半径)が分かれば、求められることになります。
なお、この式の通り、もしトルクが同じであれば、タイヤ直径が小さいほど、タイヤ周りに働く力は大きくなることに注意してください。
タイヤ直径は、これまで使ってきたように、パーツの説明に書いてあるか、実際に直径を測ってみれば良いんでしたよね。
というわけで、あとはタイヤのトルクが分かれば良いのです。
もう少しです。

タイヤ周りのトルク

最後の関門、タイヤのトルクを求めます。
おさらいですが、タイヤを回転させるには、モータを回転させる必要があるんでしたよね。
モータはギヤを介して、タイヤ(ホイール)を回転しているんでしたね。
ということは、タイヤのトルクも、モータやギヤが関係していることになります。

まず、モータのトルクについて。
モータも回転している物体である以上、回転させる力、トルクを発生しています。
そのトルクは、モータの説明に書かれています。
例によってトルクチューン2モータの仕様を見てみましょう。

トルクチューン2モータの推奨負荷トルク:1.6~2.0(mN・m)

推奨と書かれているのは、モータの力が発揮できるトルクはこの値という意味ですが、今回の計算ではこの値がモータのトルクとして計算しましょう。
(mN・m)という単位ですが、(mN)は「ミリニュートン」です。
ミリは、m(メートル)とmm(ミリメートル)みたいに、1000で割り算した値ということです。
1(N・m)=1000(mN・m)
1(mN・m)=1/1000(N・m)
ところで、1(m)=1000(mm)ですから、
1(N・m)=1000(N・mm)でもあるので、1(mN・m)=1(N・mm)となり、(mN・m)と(N・mm)は、同じ値になります。
これまで、タイヤ直径は(mm)で計算していたので、トルクも(mm)を使っている方が計算しやすいです。
よってトルクチューン2モータのトルクは、1.6~2.0(N・mm)です。
これまで同様、最小値と最大値の平均値を計算に使うこととすると、結果トルクチューン2モータのトルクTm(トルクチューン2モータ)は、
Tm(トルクチューン2モータ)=(1.6+2.0)/2=1.8(N・mm)
となります。

次に、ギヤに回転が伝わるとどうなるか。
ギヤには減速比があることは前回解説しましたが、減速させると、回転数が下がるだけではないのです。
回転数が下がった分、実はトルクが増加するのです。
これを説明すると、それだけで記事が書けそうなので今回は割愛しますが、ものすごく簡単に言うと、「モータが発生した仕事率が一定であれば、回転数(速度)を遅くした分、力(トルク)が増える」ということです。
身近な物の例では、変速機付きの自転車の場合、3より1で漕いだ方が遅いしたくさんペダルを回さないといけないけど軽くなったり、車の発進時は3速ではなく1速の方が速いことが、これに当てはまります。
どのくらいトルクが増えるかというと、減速比の分だけ増えます。

入力されたトルクTi×減速比i=出力されるトルクTo

もし超速ギヤであれば、i=3.5なので、モータトルクが3.5倍に増えます。
これもすごいように思いますが、標準ギヤであればi=5なので、モータトルクが5倍に増えます。

というわけで、モータのトルクがギヤで増加されてタイヤに伝わるので、モータの出力トルクをTm、ギヤの減速比をig、タイヤ(ホイール)周りのトルクをTwとすると、以下の関係になります。

タイヤ(ホイール)周りのトルクTw=モータの出力トルクTm×ギヤ減速比ig

これで、加速度の計算に必要な条件が揃いました。

加速度を求める

これまでの内容を整理します。
ミニ四駆に働く力F=タイヤ(ホイール)周りのトルクTw/(タイヤ直径d/2)
=モータの出力トルクTm×ギヤ減速比ig/(タイヤ直径d/2)
ミニ四駆の質量m(ハカリで測定する)より、加速度aは、以下の式に整理できます。

加速度a=ミニ四駆に働く力F/ミニ四駆の質量m
a={モータの出力トルクTm×ギヤ減速比ig/(タイヤ直径d/2)}/ミニ四駆の質量m

これで加速度を求めることができます。

実際に加速度を計算してみる

今、ミニ四駆の条件が、以下の通りとします。

ミニ四駆Aの内容
トルクチューン2モータ:出力トルクTm=1.8(N・mm)
標準ギヤ:減速比ig=5
小径タイヤ:タイヤ直径d=24(mm)
ミニ四駆の質量:標準的な重さを想定して、120g=0.12kgとします。

このミニ四駆が、スタートして速度0(mm/s)から加速する時の加速度を求めます。

a={Tm×ig/(d/2)}/m
a={1.8×5/(24/2)}/0.12
a=6.25(N・mm/mm/kg=N/kg=m/s^2)=6250(mm/s^2)

ということで、このミニ四駆は1秒間に6250(mm/s)だけ速度が上がるような加速をします。

次に、ミニ四駆の条件を変えてみます。

ミニ四駆Bの内容
レブチューン2モータ:推奨負荷トルク1.2~1.5(N・mm)なので、出力トルクは平均値として
(1.2+1.5)/2=1.35(N・mm)
超速ギヤ:減速比ig=3.5
大径タイヤ:タイヤ直径d=31(mm)
ミニ四駆の質量:標準的な重さを想定して、120g=0.12kgとします。

同様に、速度0(mm/s)から加速する時の加速度を求めます。

a={Tm×ig/(d/2)}/m
a={1.35×3.5/(31/2)}/0.12
a=2.54(N・mm/mm/kg=N/kg=m/s^2)=2540(mm/s^2)

ということで、このミニ四駆は1秒間に2540(mm/s)だけ速度が上がるような加速をします。

これを比べて、どのように感じるでしょうか。かなり大きな差なのではないかと思います。
もう少し具体的に、この加速度の違いを考えてみましょう。

速度3000(mm/s)になるまでの時間を求めてみましょう。
具体的な解説は別の機会にしようと思いますが、一定の加速度aで加速する場合、速度がV1からV2になるための時間tは、以下の関係があります

今の速度V2=元の速度V1+加速度a×時間t
t=(V2-V1)/a

ということで、先程のミニ四駆AとBが、速度3000(mm/s)になるまでの時間を求めてみます。
まず、ミニ四駆Bから。

t=(V2-V1)/a
=(3000-0)/2540
=1.18(s)

次に、ミニ四駆Aです。

t=(V2-V1)/a
=(3000-0)/6250
=0.48(s)

というわけで、ミニ四駆Bは1.18秒かけてようやく3000(mm/s)になりますが、ミニ四駆Aはたったの0.48秒で3000(mm/s)です。
これはスタートでミニ四駆Aが圧勝ですね。
というわけで、レブチューン2モータと超速ギヤ、大径タイヤで速度をあげても、スタートや加速力で苦戦することになるので、コーナーが多いコースではむしろ遅くなる可能性があるのですね。
とはいえ、もちろんストレートが長いコースなどでは、多少スタートに出遅れても速い速度で追い越す可能性もあります。もしストレートだけのコースで、このミニ四駆Bがミニ四駆Aを追い越すにはどのくらいのストレートがあれば追い越せるのでしょう。
その考察は、次回書いてみようと思います。
お楽しみに。

車の場合の計算について

車の場合についても、これまで同様、やはり基本はミニ四駆の加速度を求める方法と同じです。
違うのは、モータのトルクTmを、エンジンのトルクTeに置き換えることと、減速比igはこれまで同様変速機の減速比iiと最終減速比ifとの積、ii×ifに置き換えることで、求まります。

加速度a={エンジンの出力トルクTe×変速機の減速比ii×最終減速比if/(タイヤ直径d/2)}/車の質量m

まとめ

もう一度結論を書いておきます。

一般的な物体は、以下のニュートンの運動方程式が当てはまる。
加速度a=物体に与えた荷重F/物体の質量m
ミニ四駆の場合、
タイヤ周りに発生する推進力F=タイヤ周りのトルクTw/(タイヤ直径d/2)
タイヤ周りのトルクTw=モータ発生トルクTm×ギヤの減速比ig

車の場合、
モータ発生トルクTmをエンジン発生トルクTeに、ギヤの減速比igを変速機と最終減速比の積ii×ifとに置き換えると得られる。
但し、全ての抵抗は無視し、タイヤと路面との摩擦係数は1(滑らない)とする。

以上より、ミニ四駆の加速度は、モータトルクが大きく、減速比が大きく、タイヤが小さく、マシン重量が軽いほど、加速度が高くなるということですね。

というわけで、ミニ四駆や車の加速度を求める方法でした。
トルクチューン2モータや標準ギヤ、小径タイヤが活躍する事ができて良かったですね。
ミニ四駆は全てのパーツに存在意義があると思っていますので、皆さんもコースにあったセッティングを追求するため、見落としていたセッティングポイントがないか考えてみると面白いかもしれませんよ。

不明点などは、コメントやお問い合わせフォームより受け付けます。

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